『はみだし刑事情熱系』柴田恭兵さんの魅力!
ドラマ概要
テレ朝系で1996年から8年にわたり放送。Prat1~7、最終章と全8シリーズでした。主題歌は毎シリーズ違っていましたが、印象的なのは第1シリーズの中島みゆきさんの「たかが愛PR」。離婚して妻・娘と別れた刑事の男が、事件や普段のやりとりを通して元に戻っていくというストーリー。DVD-BOX8巻すべて購入して観賞しました。主役の高見兵吾役に柴田恭兵さん、元妻で上司の根岸玲子役に風吹ジュンさん。
私の好きな柴田恭兵さん!
あぶない刑事からのファンですが、このドラマでも恭兵さんの幅広く豊かな演技力を観ることができます。小さいころから憧れてきた男性像。あんな大人になりたいなぁと思っていました。渋くて優しく格好いい。ここぞというシーンでの涙ながらの、または目を潤ませながらの熱演は見る者の心を震わせます。また、陽気な一面も飄々と演技しています。身のこなしの軽さ、カッコイイは走り方、愁いを含んだ様々な表情は、役者としての確かなチカラを備えていると思います。セリフ一つ一つに、そのシーンに合った感情を込めて出てくる言葉には説得力が大いにあります。メリハリの利いた演技は水泥のひとつ。小さな所作にも目一杯気を配っているのが分かります。そして、セリフのないところ(つまり行間)での何とも言えない表情での芝居は圧巻。
このドラマのテーマのひとつに『犯人を救う』があるので、拳銃でバンバン打つというのはあまりありません。犯人に熱く語りかけ説得するところが見所の一つでもあります。言葉を尽くして最後の最後まで、時に優しく時に厳しく語り掛ける柴田さんの演技は、演技を越えている所にあるようにも思います。観ていると、数秒の熱演が私に涙を流させます。その言葉ひとつひとつが潤んでいる感じもあります。
風吹ジュンさんの魅力!
とにかく、ずば抜けてカワイイの一言。笑ったときの目の形がその可愛さを増幅させています。そして、嬉しさや悲しみと言った表現をする潤んだ瞳が、何とも言えない。怒ったときの表情も可愛いから不思議。恭兵さんとの息もピッタリで、目や顔の表情だけでの言葉のないやりとりは私にも伝わってきます。髪型も初期はロングでしたが、それ以降はアップして前髪の左半分をサラッとたらしている感じで、どちらも清潔感があり素敵。いつまで経っても失われない可愛さは声とともに魅力的。情感たっぷりのセリフは、私を作中に引き込んできます。強さと可憐さを見事に表現しています。そして何より全編を通して輝いています。
課長という立場ゆえに、時に強さを表現されていますが、毅然と凛々しくもあり優しくもあります。タイトル通り、『はみだし』た部下を纏めていく大変さゆえに突き放すときの言葉は強くありますが、その中にも思いやりのある可憐さが垣間見えます。元夫役の柴田さんとの微妙な関係を、台詞だけでなく「目」でのやりとりで見せる芝居は息もピッタリです。
※
初期シリーズに出ていた本部長役の愛川欽也さんもいい味を出していますし、最後の方まで出ていた樹木希林さんも柴田さんとの掛け合いも飄々と演じています。ただ、自分より若い課長さんに核心をついた言葉で『ビシッ』と言うのもまた素敵です。相棒役の風間トオルさんも二枚目ながらも人間的に成長していく西崎役を好演しています。娘のみゆき役をpart4まで演じた前田愛さんも、衒いのない溌溂とした演技で柴田さん風吹さんと互角に渡り合っています。
軸になる4つのストーリー
全8シリーズを通して事件解決ストーリーとともに流れているのが、軸になる4つのストーリーです。このストーリーがあるからこそ、単なる刑事モノではなく全編を通して変らぬ色合いを放っています。
『父親とは何か』が一貫して描かれていて、父親との関係性は、以下の4つに描かれています。
- (父親役の恭兵さんと娘との関係)バツイチの父親とその娘との交流が丁寧に描かれています。娘の成長とともに父親としての成長が見られます。長い間放っておいた娘との距離をいかに埋めていくかというシリアスな内容ですが、二人の微妙な心の動きに心打たれます。
- (父親役の恭兵さんと元妻との関係)理由あって離婚した元夫婦の、復縁に至るまでの葛藤や微妙な心理が描かれています。嫌いで別れたわけではないのですが、いろんなすれ違いやお互いの思いやりといった視点は、今後の展開に興味が沸いてきます。
- (父親役の恭兵さんと幼いころに離れた父親との関係)最終シリーズで描かれていますが、父親とはどういう存在なのかを問いかけてきます。子供を"捨てた"自分も、幼いころに同じように父親に捨てられたという経験があぶり出されますが、何年経っても『父親』というものへの憧憬はあるのかもしれません。
- (父親役の恭兵さんと元妻・娘の家族3人の関係)父親・母親・娘の3人による『家族』としての視点で、8年間にわたって時に厳しく時に暖かく急がずに見せてくれています。家族とは何なのか、どういう存在なのかが全編を通してテーマとして静かに流れています。
事件解決だけではない、こうした重層的なサブストーリーがあるからこそ8年間という長寿ドラマになり得たことは言うまでもありません。逆にこの様々な視点からの描写がメインストーリーだとも言えます。全シリーズを通底しているテーマがあるドラマは見ごたえがありますし、強いです。
チームワーク
刑事ドラマですから毎回事件が起きるのは当然ですが、そこにうまく上記の4つのストーリーを散りばめさせています。全シリーズが1本の映画ストーリーのようにも思います。また、所属している『広域捜査隊』のチームワークも見所のひとつ。もちろん主役は恭兵さんですが、他の刑事たちにもきちんとスポットを当ててその家族環境やプライベートな部分も丁寧に描いていっています。お互いにフォローし合いつつ事件を解決し、時には人生を歩んでいく中で大切なことを気付かせ合ったりもします。イチ視聴者として時に泣かされたり、生きる事を考えさせたりと、いろんなテーマを与えてもらったような気がします。
そして一貫して犯人への想いが語られています。それは、『犯人を救うこと』。逮捕するのはなぜか、その根底にあるのが彼らにとっては『救うこと』なのだと描かれています。更なる罪を犯させないために...。ですから、熱い説得で解決しようとします。拳銃で撃つ場面が少ないのもその理由のひとつ。恭兵さんたちの説得シーンは涙モノです。
名シーン2つ抜粋
脚本が素晴らしいゆえに、いくつもの印象的なシーンやセリフが生まれています。8年分あるのでいろいろ迷いますが、私が心打たれたシーンを2つほど紹介。
玲子(風吹ジュン)・・・・・東京にいるはずの玲子だが
「来ちゃった..」
兵吾(柴田恭兵)
「玲子...」
玲子
手を差し出して
「だって指が淋しがってるんだもん...」
そっと指輪をはめてあげる兵吾。
話始める玲子の言葉を遮りスッと抱き寄せ、浜辺を共に歩き出すシーン。
玲子(風吹ジュン)
「...あのね、私、言いたいことがあるの」
「だから言って。ただいまって。.........言って。」
兵吾(柴田恭兵)
「....ただいま」
玲子
「おかえりなさい...」
そしてスッと抱き寄せる兵吾。
お互いに涙ながらに言葉にする、片田舎の静かな駅のホームでのこのシーン。
刺激的でも衝撃的でもなく、何気ない言葉です。それをお二人の演技力だけで、微妙な心の機微を表現している感動的なシーンになっています。どちらも、お互いの気持ちが近くなってきているのに気付いてからの場面なのですが、大人の、元夫婦ならではのこのやりとりは、お二人の情感たっぷりの演技力爆発といつた感じで、尚且つしっとりとしていて素敵の一言。長きにわたり共演し続けてきたからこそという感じがします。他にもいくつもの名シーン・名ゼリフがあるのですが、やはりこの2つのシーンは別格に格好イイ。私も涙。Par1から最終章まで観て初めて、これらのセリフの意味合いとホントの意味でのこのドラマを理解したのだと思っています。
最後に一言。『名作』。
もっと補足
恭兵さんの軽やかなフットワークを見ていると、つくづく格好良くて感嘆してしまいます。そんな恭兵さんの歌手としての一面も取り上げなければなりません。『あぶない刑事』での挿入歌として秀逸な「WAR」「RUNNING SHOT」「FUGITIVE」「TRASH」などは、どれも魅力に溢れています。当時は歌番組にも出演されていました。立ち振る舞いの美しさは素晴らしいの一言。そんな恭兵さんのライブが唯一映像化されているのが、「
KYOHEI SHIBATA '89 CONCERT AGAIN ~そしてこの夜に~ [DVD]PR
」で、アンコール後の「RUNNING SHOT」でのステップワークやジャンプ力は半端ないです。身体能力の高さを遺憾なく発揮していて、それでいて男の色気が漂うという、何というか惹きつけられて仕方がないのです。
名曲
part6のエンディング曲は竹内まりやさんのアルバム「Turntable (通常版)PR」に収録されている「ノスタルジア」ですが、これが名作「駅」を思わせるマイナー調の哀愁を感じさせる名曲なのです。エンデイングロールでは、柴田さんがスーツ姿で歩くのを撮っているこのシーンにこの曲が流れていますが、マッチし過ぎています。柴田さんのスーツ姿はなぜ格好いいのだろう。渋い、渋すぎる!