社会福祉士の養成専門学校のレポート課題
part3
#15 就労支援サービス
障がい者の就労の現状から、障がい者の就労支援のあり方についてまとめなさい。
(1500文字以内)
わが国の障害者の就労に関する動向として、厚生労働省が2008年に発表したところによると、障害者総数は約709万人で18~64歳までが約360万人と見込まれており、そのうち約50万人(約14%)が一般雇用者、約18万人(約5%)が授産施設で働く者とされている。また、授産施設から雇用就労への移行は年間あたり授産施設利用者の約1%と低く、授産施設等の平均工賃月額が約1.5万円と低い。2009年の雇用状況は、民間企業では実雇用率は1.63%、雇用障害者数は約33.3万人、法定雇用率達成企業割合も45.5%といずれも前年より増加した。障がい者の福祉施策における就労支援であるが、これは障害者自立支援法に基づくものである。同法のサービス体系は、介護給付、訓練等給付、地域生活支援事業から成りまたそれらは、日中活動支援と居住支援に分けて考えられており、就労支援サービスとしては、日中活動支援の訓練等給付として、就労移行支援と就労継続支援(A型・B型)の3つが用意されている。就労移行支援事業は、通所により個別支援計画に基づく職場実習等のサービスにより、職場開拓および就労後の職場定着を支援するものである。就労継続支援事業は、通所による就労の場を提供し支援するものであり、雇用契約があるA型、雇用契約のないB型、がある。各事業とも利用者に応じた就労を実現すべく支援するものである。
次に障害者雇用施策における就労支援であるが、これは障害者雇用促進法に基づくものである。同法のサービス体系は、①障害者雇用率制度②障害者雇用納付金制度③職業リハビリテーションから成り、障害者の雇用の促進と職業の安定を図ることを目的としている。①は、民間企業、国・地方公共団体は、法定雇用率に相当する数以上の身体・知的障害者を雇用しなければならないものである。②は、雇用率未達成企業から障害者雇用納付金を徴収し、雇用率達成企業へ障害者雇用調整金を支給する制度であり、経済的負担のバランスを保つものである。③は、医療・保健福祉・教育等の関係機関との連携のもと、障害者への職業指導や職業紹介等を行うものであり、ハローワーク、障害者職業センター、障害者就業・生活支援センター、障害者職業能力開発校等で実施している。就労支援サービスとしては、①ハローワークにおける職業相談・職業紹介②障害者就業・生活支援センターにおける窓口相談や職場・家庭訪問等が実施されている。
障害者の就労支援に携わる機関は様々であり、携わる専門職も多種多様である。まず福祉分野での専門職として①サービス管理責任者②就労支援員③職業指導員④生活支援員⑤障害者就業・生活支援センターの生活支援担当職員がおり、雇用分野での専門職として①障害者職業カウンセラー②障害者就業・生活支援センターの雇用支援担当者③ジョブコーチがいる。彼らは障害者のニーズに合わせて主に個別的支援計画に基づきそれぞれの専門的知識を用い、時には関係機関との連携により就労への切れ目のないサポートを行っている。また、地域における労働・福祉等のさまざまな制度や施策を当事者のニーズに合わせて、横断的に適用させることが重要である。(1310文字)
振り返って...
根拠数値を示しつつその実態について論述しましたが、健常者も含めて働くことの意味に関する記述も加えるとよかったかもと感じます。評点:90点(評価A)合格
keyword:就労移行支援、就労継続支援、障害者雇用促進法etc...
#16 相談援助演習2
ボランタリーなクライエント(自発的クライエント)と、インボランタリーなクライエント(非自発的クライエント・拒否的クライエント)の相談援助のあり方について述べなさい。
(1500文字以内)
相談援助は面接相談として行われることが多いが、なかでも相談援助プロセスの初期段階でのクライエントへの態度は重要である。ケース発見は、クライエントが自ら相談にくる場合やソーシャルワーカーが問題を発見し、問題状況を認識してもらうところから援助を始める場合など様々であり、またソーシャルワーカーの所属機関の性質によってもクライエントの発見時期や方法、相談援助の開始の契機も様々である。ここでは、クライエントとなる人の特徴によって分類し、ケースの発見、相談援助の開始における留意点についてまとめてみる。
ボランタリーなクライエントとは、クライエント自身や家族などが問題を感じ、さらに自分たちでの問題解決が困難であると認識し、専門家の力を借りようとしている人を指す。そして彼らは、問題が何であるかや、その問題解決が自らの力では困難であると認識している。よって問題解決に取り組む気持ちや、それを行動におこす動機づけは高いため、ソーシャルワーカーとの話し合いは比較的スムーズである。そうしたクライエントがソーシャルワーカーを活用して問題解決を図ろうとする意欲をワーカビリティと呼ぶが、彼らは概してワーカビリティが高いといえる。そしてこうしたボランタリーなクライエントの場合、信頼関係の構築が比較的容易なためラポールの形成も短時間にできる。インボランタリー・クライエントとは、自らが積極的に相談し問題解決を求めているとは限らない、つまり自発的ではないクライエントを指す。そしてインボランタリー・クライエントは①相談援助の意味や目的を理解していないクライエント②相談することに拒否や反発などマイナスの感情をもったクライエント、に分けることができる。①の場合、ボランタリーなクライエントよりも注意深く相談援助を進める必要があり、特にラポールの形成に時間と力を注がなければならない。そして生活のなかでの問題はないか話し合うなかで、ワーカーはラポールの形成に注力し、意識と態度によって状況を理解したい、問題があれば支援したいということをクライエントに伝えることが重要である。②の場合、まずは信頼関係を結ぶというよりもマイナスな感情を、話し合うことができる関係にまで修復することから始める必要がある。その際、傾聴の姿勢を示し、審判的態度にならないように充分に気を付け、「このソーシャルワーカーは話を聴いてくれる」という思いを持ってもらうことから、少しずつ関係を結ぶようにすることが大切である。ただし、公平さも保ちながらの傾聴が重要であり、それはラポールの形成に大きく寄与する。
また、いずれのクライエントも相談援助の最初の時期は二つの不安をもっているといわれており、①自分のもっている問題そのものに対する不安②その問題を他人に話すということへの不安と恐れである。これら二つの不安をもって相談に訪れるクライエントに対し、①の不安は、今後ともに考えていくものであるので、まずは②の不安を除去することに重点が置かれるのであり、面接場所の環境を工夫する等して緊張を和らげ、話しやすくしてあげることなどが大切である。以上のように、ソーシャルワーカーがケースとして認識し、クライエントの相談援助を開始する際には、「ラポールりの形成」と「不安の除去」に重点が置かれるのである。そうすることによって、相談援助プロセスの次の段階へのスムーズな移行が可能となるのである。(1410文字)
振り返って...
クライエントが置かれているケースの状況に応じた対応につい論述しましたが、アプローチの方法や援助の展開の重要性にも触れられれば良かったかなと思います。評点:80点(評価A)合格
keyword:ラポールの形成、不安の除去、クライエントetc...
#17 社会調査の基礎
社会調査における倫理と個人情報保護の意義についてまとめなさい。
(1500文字以内)
社会福祉士が調査・研究を行う意義の一つに、研究蓄積によるソーシャルワークへの貢献があり、それは様々な学びを得ることができる半面、調査対象者のプライバシーや個人情報を守るという倫理責任を有している。社会福祉士及び介護福祉士法第46条の秘密保持義務規定にみてとれる。まず調査にあたっては、研究倫理が求められる。研究倫理とは、研究の質を確保するとともに研究対象者のプライバシーや個人情報を保護するという研究において従うべきモラルである。つまり「研究」と「対象者」両者への倫理的態度が必要であるが、社会調査においては社会調査協会が定めた「社会調査倫理要領」にその倫理事項が掲げられているが、調査対象者の権利擁護の重要性がうたわれている。そして社会調査の具体的手続きについても倫理規範が求められる。
第一に研究や調査の趣旨をわかりやすく説明することである。そのために社会的目的をできるだけ具体的に記す必要がある。第二に調査データの用途を明示するとともにプライバシー保護の方針も明記しなければならない。そうした調査協力の依頼文書は研究者自らが作成するべきであり、一般的な記載事項として、挨拶、依頼内容の要旨、倫理上の約束、研究の特徴、アポイントの依頼、問い合わせへの対応と挨拶などが必要である。そして以上のような倫理的配慮は、各々の研究者のポジションによって、倫理委員会、指導教員、上司、施設や団体の責任者などの許可を受けておくべきである。そうしたことは、対象者の不利益を防ぐための手続きであると同時に、価値ある研究結果に導くことにもつながるのである。
調査の過程で知り得た個人情報の保護についてであるが、社会福祉士の重要な倫理として、「プライバシーの尊重」「秘密の保持」があり、これは研究においても遵守されるべきものである。そこで論文の執筆などにあたっては、対象者・協力者などの氏名・住所・利用施設機関名・援助者の氏名などの固有名詞は避け、個人の特定されるのを防ぐことが重要である。例えば、無作為のアルファベットでの記載、生年月日は生まれ年まで、年齢は○○代(前半、半ば、後半)などとする。こうしたことは個人情報保護法の第3条において、「個人情報は、個人の人格尊重の理念の下に慎重に取り扱われるべきことに鑑み、その適正な取扱いが図られなければならない」とされていることに沿うものである。個人情報の管理についは、日本介護福祉学会の研究倫理指針でデータ管理の留意点を挙げている。①得られたデータは、対象者個人が特定できる形で発表されてはならない②調査研究のデータ管理は厳重に行わなければならず、そのデータは個人のを特定できる情報を削除したうえで管理する。また、暗号化やパスワードによるロック機能によるセキュリティ対策を講じる③ネット環境に接続している場合には、パソコン上のデータをファイル交換ソフトやスパイウェア等の影響から守る必要がある④調査データの物理的な管理は、施錠可能な引き出しや棚に収納するなどする⑤データ処理のためにプリントアウトされたものについても、研究発表や研究論文執筆後、必要がなくなった時点で破棄されなければならない、ことである。(1317文字)
振り返って...
調査を行う際には必ず個人情報保護、職業倫理が求められる云々を論述しました。社会調査を実施する際のあるべき姿を整理して書いたのですが、もっと分量的には多くて良かったかも。評点:80点(評価A)合格
keyword:個人情報保護、機密保持、社会調査の目的etc...
#18 相談援助の理論と方法3
相談援助を社会福祉援助活動ととらえ、その対象領域をどのような観点から、どのようにとらえるかについてまとめなさい。
(1500文字以内)
社会福祉援助活動は制度としての社会福祉と相補的かつ相乗的に働くことが重要である。なぜなら制度では柔軟性が低いからである。人はその社会的環境と深く関わることから、個人の問題から社会の問題まで幅広いものが対象となる。そしてその問題の定義から対象領域を見出し解決を図る必要がある。方法論としては個人や家族、集団、地域といったそれぞれの専門的援助方法を統合したシステム理論が形作られてきており、今日の複雑化した社会で、問題解決の方策を、援助を必要としている人とともに見出していくことに、システム理論を背景とした対象理解の意味が有る。そこで、その対象として個人、家族、集団、地域をどう捉えるかをまとめてみる。
個人については、人と環境の交互作用に焦点を当て、人が環境に能動的に働きかける対処能力を高めると同時に、環境の応答性を強化するように、両者の相互作用を改善するための援助活動を展開することが重要であるという観点から以下の理解が必要である。①クライエントの生活問題をその人固有の問題として尊重することである。②人間の社会性について理解することである。③クライエントは内的能力を有し、それを発展させ変化させることができると信じることである。家族については、援助過程に大きな影響と役割を持っているため、家族への関わり方として家族システムの視点が重要であるという観点から以下の理解が必要である。①システムとしての自動性である。問題発生時にシステムは自動的に役割などを補完しあうが、その変化に注意したい。②閉鎖性と開放性である。家族内での解決もしくは家族外からの援助受け入れ両面からの問題の理解③安定性である。秩序をもたらしている家族内のルールやパターンの理解④複雑性である。問題の原因と結果が円環的⑤適応性である。家族は一定の適応を保ち機能している。問題の客観的事実と家族の主観的側面を重視する。
集団(グループ)については、人は、集団における様々な役割を果たし、様々な経験を通して成長していく。援助者はグループ全体の把握とグループのメンバー一人ひとりの把握という2つの視点が必要であるとの観点から、とりわけグループ全体において、以下の理解が必要である。①グループの成立要件、経緯②グループの目的③グループ参加におけるメンバーの要件④グループの構造⑤グループの規範⑥グループのメンバー間の相互作用⑦グループの発達⑧グループ外のほかの集団との関係であり、これらはその後のグループワークの展開に重要である。地域については、社会福祉実践の基盤であり、地域包括ケアシステムの構築などコミュニティソーシャルワークの展開が重視されているという観点から以下の理解が必要である。①地域を重層的に理解する。生活圏域、行政区域、文化的組織区域、用途別区域、コミュニティ区域など多角的な視点が必要である。②地域を基盤としたコミュニティソーシャルワークの機能である。実践のための地域の捉え方としては、①地域住民の主体性と住民の連帯感のある地域②エコロジカルな視点からの生活の場である地域③自己実現可能な地域④フォーマル、インフォーマルの社会資源の開発可能な地域⑤ソーシャル・サポート・ネットワークが形成され総合的サービス提供が可能な地域⑥ソーシャル・アドミニストレーション機能などにより、課題を解決できる地域、以上のことから、個人、家族、集団、地域を理解する視点を踏まえ、個人と環境の交互作用のなかでクライエントのおかれた状況全体をとらえていくことが重要である。(1473文字)
振り返って...
相談援助の対象を具体化して論述しましたが、その一連の行為は繋がっているのだと強調すべきだったかもと思います。評点:80点(評価A)合格
keyword:社会的環境、システム理論etc...
#19 保健医療サービス
医療ソーシャルワーカー(MSW)の役割について述べなさい。
(1500文字以内)
医療ソーシャルワーカーとは、医療機関において、保健医療サービスに関わる生活相談や問題解決のための支援等を行う社会福祉士のことである。医療機関において社会福祉専門職がチーム医療に参加することにより、医療専門職のチームに社会福祉の情報やそれらの支援という受け皿を組み込むことにより、医療・福祉のトータルサポートが可能になるのである。また、医療ソーシャルワーカーの役割としては、「医療ソーシャルワーカーの業務指針」にその基本的な業務内容が示されている。
第一に個人や家族の諸問題に対する支援であり、以下の3つの要素があげられる。①経済的問題への支援②心理的社会的問題への支援③受診・受療援助である。①であるが、患者の経済的余裕がなく必要な医療サービスを受けることができなければ、その後の生活や社会復帰も難しくなる。よって医療ソーシャルワーカーは医療機関内のシステムや社会保障制度などを活用しながら、医療費の確保や生活費の問題解決やその調整援助等に携わることがより強く求められる。②であるが、人が傷病にかかった時には、大きな心理的打撃を受けるものである。勤め先などからの離脱なども考えられ、医療ソーシャルワーカーは、患者及び家族のナラティブを丁寧に傾聴し心情を深く理解し、その人の個別具体的な生活状況の確保のため、社会資源を活用し支援を行うことが重要である。③であるが、医療行為の最終責任者は医師であることから、受診・受療については、医師の指示に基づいて行われる必要がある。また指示を受けた際にも必要に応じて経済的心理的社会的観点から意見を述べ、緊密な医師との連携・協力体制を作る必要がある。
第二に今後の新たな生活に向けた具体的支援であるが、以下の2つの要素が挙げられる。①退院援助②社会復帰への支援である。①では、患者や家族の退院やその後の社会生活については、時間的余裕・専門的知識の必要性から、医療ソーシャルワーカーの退院計画に基づく必要な支援が求められる。またハイ・ソーシャルリスク患者群の設定や連続的でシームレスなケアマネジメントシステムづくりも大切である。②では、退院後の社会復帰に関わる支援である。就労には、一般就労と福祉的就労があるが、基本的にどちらも職場環境整備が必要であり、保健医療サービスの代表として、職場や会社に理解を求め交渉していくことが必要である。職場への順応は個人因子としての人間的魅力を生みだし、またハローワーク専門相談員やジョブコーチなどと連携して環境因子を導入することも大切である。
第三に地域活動の展開であるが、以下の3つの要素が挙げられる。①組織における地域との窓口地域活動を行う際には、地域連携パスを念頭に所属組織のアセスメントをSWOT分析等を用いて実施し、病院の代表として活動する。地域の社会資源を常にモニタリングし再アセスメントすることにより、患者に見合ったサービスを提示することができる。②保健医療サービスのシステム構築個人の問題を地域の問題として捉え、関係機関同士によるカンファレンスなどのを行い、共通の手法で地域に情報発信すれば、質の高い連携が可能となる。また、プロジェクト活動によって生まれた新たな社会資源を、再びミクロレベルで利用しPDCAで確認・評価することによって、その内容は充実する。③地域の組織化と社会への働きかけ関係機関や当事者などの協力による課題に対するリサーチを実施し、その結果に基づいてマクロに働きかけるソーシャルアクションを行うことが重要であり、社会の認知度の向上、社会的同意をえて、次のプランニングを構築することが重要となる。(1495文字)
振り返って...
医療ソーシャルワーカーの業務指針を軸に論述しましたが、中でも特に注視すべき事項についての記述あってもよかったと想っています。評点:70点(評価B)合格
keyword:チーム医療、PDCA、業務指針etc...
#20 権利擁護と成年後見制度
成年後見制度について、立法趣旨を踏まえて説明しなさい。
(1500文字以内)
成年後見制度とは、現に判断能力が不十分な人に対して、成年後見人等による保護・支援を受けることができるという制度である。そして成年後見制度は、法定後見制度と任意後見制度に大別され、法定後見制度は、後見、保佐、補助の3類型から構成される。成年後見の対象者(成年被後見人)は、精神上の障害により判断能力を欠く常況にある人で、成年後見の利用には家庭裁判所への申請、及び後見開始の審判を受ける必要がある。そして成年後見人が選任されるが、人数に制限はなく法人でも可能である。但し欠格事由の者は不可である。成年後見人の権限には、財産管理権、代理権および取消権があるが、同意権はない。但し、代理権では利益相反行為等が、取消権では日常生活に関する行為等が制限され対象外である。そして付与された権限の範囲内で、善管注意義務と本人の意思の尊重義務・身上配慮義務を負いながら、成年被後見人のための財産管理事務と身上監護事務を行う。
保佐の対象者(被保佐人)は、精神上の障害により判断能力が著しく不十分な人で、保佐の利用には家庭裁判所への申請、及び保佐開始の審判を受ける必要がある。そして成年後見人の場合と同様に、保佐人が選任される。保佐人の権限には、基本的には同意権・取消権がある。同意権・取消権の対象は、民法第13条第1項各号に定められた重要な法律行為である。また付加的には、本人の同意を伴う代理権付与の審判による代理権、同意権拡張の審判による同意権・取消権の拡張が認められている。また代理権には、身分行為など、いくつかの制限がある。そして付与された権限の範囲内で、善管注意義務と本人の意思の尊重義務・身上配慮義務を負いながら、被保佐人のための事務を行う。
補助の対象者(被補助人)は、精神上の障害により判断能力が不十分な人で、補助の利用には家庭裁判所への申請、及び補助開始の審判と補助人に対する代理権または同意権の付与の審判を受ける必要がある。そして成年後見人の場合と同様に、補助人が選任される。但し上記審判には本人の同意が必要である。補助人の権限としては、同意権付与の審判または代理権付与の審判による同意権・取消権と代理権がある。同意権・取消権の対象は、当事者の選択した民法第13条第1項各号に定めた法律行為の一部である。代理権の対象は、当事者が選択した特定の法律行為である。また代理権の制限と事務については、保佐人の場合と同様である。
任意後見制度とは、本人が判断能力を有している間に、判断能力が不十分になったときに、任意後見人による保護・支援を受けることができるという制度である。任意後見人の資格には、不適任事由がない限り法律上の制限はない。また権限としては、代理権のみで取消権はなく、また事務の対象は、生活、療養看護または財産管理に関する法律行為であり身上配慮義務を負う。そしてこの制度は、任意後見契が公正証書によって締結する必要があり、公証人の嘱託により登記がなされる。また、その効力は本人の同意のもと任意後見人が選任されたときから生じる。そして契約の終了については、当事者の真意の確認および本人の不利益からの保護の観点から、任意後見監督人の選任前は公証人の認証が、選任後は家庭裁判所の許可が必要となっている。(1347文字)
振り返って...
大きく3種類の成年後見制度について論述しましたが、この制度が成立した背景についての記述に触れるべきだったと思います。評点:80点(評価A)合格
keyword:後見、保佐、補助etc...
#21 相談援助演習3
事例研究の意義と方法についてまとめなさい。
(1500文字以内)
事例研究とは、課題事例を素材として、その状況や課題の原因や影響などの分析を行う研究方法の一つである。そして事例研究を行う目的として、①記述する②説明する③評価するといったことが挙げられる。①は、出来事などの詳細な記述によって当事者や状況などの理解を深め、着想を得る。②は、理論・概念主導型と仮説構築型の二つのタイプがあり、既存理論による説明や仮説によるメカニズムの説明などを試みる。③は、プロセス評価と結果評価があり、実施する援助に対して実施中のモニタリングや実施後の効果測定などを行う。こうした目的をもつ事例研究の実施により以下の意義を見出すことができる。①ソーシャルワーク教育・研修②援助効果の向上③アカウンタビリティ④社会制度・政策や環境の改善である。①は、事例に接することで追体験をし、ソーシャルワーカー業務を具体的総合的に学ぶことができる。②は、事例研究からEBP、つまり根拠に基づいた実践を行うことによる援助効果の向上が期待できる。③は、事例研究を行うことにより、クライエントに対して、期待効果やリスク等を説明する責任を実行することができる。④は、個々の事例を通じて、法制度や政策、一般の人々の認識や社会資源など社会環境改善の取り組みのきっかけに成り得る。
事例研究の方法であるが、①研究目的の決定②研究デザインの決定③事例の選定と研究協力の依頼④データ収集⑤事例の分析・考察⑥発表という流れが一般的である。①は、先行研究のレビューにより具体的で明確な研究目的を決める。②研究目的に適した研究デザインを決める。その際には、固有事例か手段的事例か、単一事例か複数事例かなどを考慮する。③研究対象事例の決定と事例の本人や関係機関への研究協力依頼をする。④様々な情報源から、主として観察、面接、文書といった形でデータ収集する。⑤研究目的に応じて柔軟に行う。ポイントは①本質的問題の発見、共通項の発見、多角的分析、原因と結果の妥当性などであり、KJ法やグラウンデッド・セオリー・アプローチなどの方法がある。考察では、分析結果と先行研究との比較を実施する。⑥研究会などでの論文としての発表などを行う。事例研究を行う際には、倫理的配慮と研究の限界、個人情報保護について充分留意する必要がある。
事例分析とは、対象の理解と新たな考え方の発見を目途とするものであり、事例研究の一環であり実践や教育・研修においても行われる。その目的は、①気づきを得る(改善への取り組みを促す)②理解を深める(専門的規範に基づいた効果的説明を促す)③よりよい援助のために何をすべきか明らかにする(具体的行動による実践への反映を促す)、ことである。以上の目的から事例分析の意義は①サービスの質の向上②専門性の向上、に役立つことだといえる。実践・教育・研修においての事例分析では、以下の7点の観点が重要である。①支援の方向性・理念・原理原則②人と状況のとらえ方③クライエントとソーシャルワーカーとの関係・かかわり方④アセスメント⑤目標と計画⑥計画の実施とモニタリング⑦結果評価である。これらは相互に関連しており、柔軟かつ多角的視点が大切である。そして事例発表をケースカンファレンス等で発表報告することにより気づきを高め、学びあうことができる。事例記載の資料には以下の6点を記載する。①テーマと検討したい点②クライエントの概要③課題の発生状況と経過④課題への対応⑤対応の結果⑥考察である。誠実な質疑応答により建設的議論を導くことが大切である。(1454文字)
振り返って...
臨床活動への応用、新たな視点の獲得などを事例研究としての意義と理解し論述しましたが、今後の求められる役割にも字数を割いてもよかったかも。評点:80点(評価A)合格
keyword:分析、個人情報保護、KJ法etc...
次は、Part4です。